都市森林プロジェクト

庭木、街路樹、公園木。これまで眺めるだけだった街の木に「活かす」という視点を取り入れて、その魅力と価値を最大化。木があって良かった! のその先に、「街の木=都市森林」の新しい循環が生まれようとしています。

都市森林株式会社

一般社団法人街の木ものづくりネットワーク

© 2019 Yoshiyuki Yuguchi

​ふたつのアプローチ

①効率を上げ、

②範囲を拡げる

①効率を上げる

「適材適所」の実現

街には驚くほどたくさんの樹種がありますが、そのほとんどは木材として流通するものではなく、その活用ノウハウがありませんでした。種々雑多な街の木が、それぞれにどんな性質を持っているのか、何を作るのに向いているのか、材としての性質を理解して、適材適所を実現できなければなりません。また、伐採から製材、乾燥、デザイン、設計からデザインまで、各工程における作業が、材の特性に応じて適切に行わなければなりません。

 

実際に伐採から製作までを行った経験を持つ木工家や職人を探すのは大変難しいことです(成果に対する信頼性がなければ投資はできません)。都市森林プロジェクトでは、あらゆる樹種の活用を試みながら、伐採、製材から乾燥、設計、加工に至るまでの一貫した取組みを行うことにより、100樹種を越える街の木の活用ノウハウを蓄積。2019年現在約150m³(直径30cm×長さ2mの丸太換算で約800本)を工事現場などから回収・加工して街の暮らしの中に戻してきました。

不適切な扱いで材の価値は簡単に毀損されてしまいます

約60樹種の適材適所で実現したライブラリー

「連携」の実現

都市森林プロジェクト=「木があってよかった」を最大化する取組みには、様々な専門家や業者の力が必要であり、これまでであれば関わるはずもなかったような業者同士の連携も必要になってきます。そのため、専門や職域に分かれているプロの世界に横串を通し、切れ目のない連携を実現しなければなりません。更には、街の木に仕事として関わるわけではない、地域住民を中心としたあらゆる人々も関われるようにしなければなりません。

そこで、プロとしての責任とクオリティを担保しながら、様々な業者を束ねてプロジェクトをドライブする会社法人(都市森林株式会社)と、誰もが取組みに参加できる場としての非営利法人(一般社団法人街の木ものづくりネットワーク)というふたつの主体をつくり、都市森林の未来をトータルで考え、発想し、実践できる形をつくりました。

「新しい仕組み」の実現

街路樹などの一部の緑地では、はじめから木材としての活用を前提とした維持管理を行うことで、木材としての利用効率を大きく高めることができるでしょう。木材化に適した樹形を意識して管理し、傷みが入るような強剪定はしない。強剪定が必要な段階になったら伐採し、あらかじめ地域で育てておいた苗木を植えることで更新する。

 

定期的な伐採と更新。

 

山の林業では当たり前に行われていることです。

「ものづくり」にとどまらず「まちづくり」へ

都市森林プロジェクトでは、街の伐採木をただ木材として活用するにとどまらず、そのプロセスに地域の人々や、関係者が関われるようにすることを大切にしています。

 

例えば、そのひとつの形である「製材ワークショップ」では、街の大木を木材に活用する過程に地域の人々が参加します。製材ワークショップでの作業効率は、決して良いとは言えません。1日かけても、皆の力を合わせてようやく数枚の板ができるかどうかです。しかし、そうして苦労して作った木材が、街のどこかで誰かのために役に立っている。木があってよかった、育てて良かった、そう思えたら、そこに行ってみたくなるのではないでしょうか。木材が行った先に人も一緒についていき、そのつながりの中からまた新しい物語が生まれていくのです。

「木があってよかった!」​を最大化

街の木を活かせるのは、なにも伐採されたときばかりではありません。都市森林プロジェクトでは、たとえば「街の木の恵みを食に活かす収穫祭」というイベントを毎年開催してきましたが、柿の木やビワなどといった馴染み深い果樹はもちろん、色々なドングリや種子、山菜や薬味、ハーブとして利用できる葉や樹皮、桜をはじめとした様々な木材チップによる燻製を試したり、果実酒や木に着いた酵母を活かしたパンを作ったり、利用できる素材の多様さには目を見張るものがあります。

 

毎年の剪定で出る枝葉を工芸や草木染に活かしたり、お花見は桜以外でしても良いものです。都市森林は、私たちの身近な自然は、私たちが気がつかなくても、毎年、四季折々、様々な恵みを落としてくれています。眺めるだけでなく、「活かす」可能性に目を開くと、それまでよりもはるかにそのことが見えるようになってきます。

都市森林資源の木材としての活用は、都市林業の一場面にすぎません。皆で植え、育て、活かし、楽しめる木々、真に暮らしとともにある木が増えれば増えるほど、私たちの暮らしもまた豊かで彩り多くなるはずです。眺めるだけでなく、もっともっと木に関わって、楽しい体験をすればこそ、自ずから木のことに詳しくなれて、より良い関係を築けます。街の木が、持てば持つほど出費やリスクが増える負債でなく、持てば持つほど嬉しいことが増える資産になればこそ、溢れんばかりの自然とともにある街の暮らしが実現するのです。